Pythonの型ヒントには、typing.Any
とobject
という二つの特殊な型があります。これらは一見似ていますが、実際には全く異なる動作をします。
typing.Anyとobjectの基本的な違い
typing.Any
は、型チェックを行わず、どんな型でも受け入れます。一方、object
は全ての型のスーパークラスであり、全ての型のインスタンスを受け入れますが、object
型の変数に対しては、全ての型で共通の操作しか許されません。
具体的には、以下のような違いがあります:
typing.Any
:型チェックしない。コード補完もしない。object
:型チェックする。コード補完はするけど、あんまり有用じゃない。
具体例
以下に、それぞれの型でどのような挙動があるかの具体例を示します。
from typing import Any
# typing.Anyの場合
any_: Any
any_ = 0 # 警告なし
any_ = 'A' # 警告なし
any_ = [0, 1, 2] # 警告なし
any_ = None # 警告なし
# objectの場合
object_: object
object_ = 0 # 警告なし
object_ = 'A' # 警告なし
object_ = [0, 1, 2] # 警告なし
object_ = None # 警告なし
このコードから分かるように、typing.Any
とobject
は、どんな値を代入しても警告は出ません。
しかし、これらの型が同じ挙動を示すのは偶然であり、その背後にはそれぞれ異なる理由があります。
背後にある理由
typing.Any
で警告が出ないのは、そもそもtyping.Any
に対しては型チェックが行われていないからです。一方、object
で警告が出ないのは、型チェックが行われ、全ての型が許容されたからです。
このように、typing.Any
とobject
は、同じ挙動を示す場合でも、その理由は全く異なります。
まとめ
Pythonの型ヒントにおけるtyping.Any
とobject
は、一見似ているように見えますが、その挙動と背後にある理由は全く異なります。これらの違いを理解することで、より適切な型ヒントを使用することができます。